ミステリーとか警察ものとか…読んだら書評書いてます

ミステリー、警察もの、組織もの、たまに他の本も、実際に読んでから書評を書いています。川崎市在住 連絡先 oyamaiitenki@gmail.com

最後の証人 柚月裕子 kindle

巻末の解説が今野敏さん、ということで今野さんファンにとっては、今野さんが評価する女性作家ということでも興味がわきそうな一冊です。

物語は法廷もので、湯月さんが大藪賞の受賞前、まだそんなに有名でなかった頃に発表された一冊です。

壮絶な家族愛の物語

法廷ものと言えば、状況は完全にクロの容疑者をどう弁護していくのか、が見どころなのですが、この一冊は、実はとても壮絶な家族愛の物語として読んでしまいました。母親は愛する息子のためにここまでできるものなのか、そして夫(父親)になげかける言葉「私たちは同志よ」にとても心を動かされていまいます。愛する夫(確かに夫をとても愛していた妻でした)に向かって「人間の絆で一番強いものは何か、って聞かれたら同志って答えるわ。恋愛感情や友情より同じ目的を持つ同志の絆が一番強いと思う」って語りかける妻の言葉に、どうしようもなく感動してしまいます。

以前に読んだ「孤狼の血」も壮絶な物語でしたが、この最後の証人もまた壮絶です。

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ネタバレになるので、詳しくは書けないのですが、家族愛とともに、柚月さんは読者に対してある仕掛けをしています。読者は柚月さんの思惑にず~っとはまって、この物語の本当の姿をず~っと誤解しながら読み進むはめになります。

そして後半で暴かれる真実!見事などんでん返し!

家族愛に感動した涙目で、思わずチクショ~って叫んでいました!笑

 

警視庁文書捜査官 鳴海理沙 「緋色のシグナル」「永久囚人」麻見和史 kindle

女性が活躍する刑事もは、ほぼ全作品手に取って読んでます。目の手術以降は、kindleにお世話になっています。Fire端末は多少重い感じがするのですが、美術関係のものも読みたかったので、カラー画面を選びました。文字を大きくできるのが便利ですね。同じ大きさで読んでいて、読みやすく感じると「おっ、少し回復してきたかな?」と前向きな気持ちになれるのもいいところ。

ところで、麻見和史さんの文書捜査官シリーズです。

容姿、性格ともに嫌いなキャラではなく、ファンになってしまいそうな主人公なんですが、これまで3冊読んで、いまいち没入できないのはなぜ?でしょうか?では

きっと「文書捜査官」というネーミングから、もっと犯人の残した文章から、あっと驚くプロファイリング技術で犯人像を導いて欲しいと思っているんでしょう。文章から書いた人のプロフィールを推測することが簡単ではないし、世間の人もSNSでなんちゃってキャラとか、まったく違う人格を演じることはよく目にします。それでも文章には本人の本当のプロフィールを推測させる何かが残ってしまう、というスーパー解析術を期待しているんですが、なかなか簡単ではないのでしょう。

「緋色のシグナル」では「品字様」(同じ漢字を3つ重ねた漢字 森とか¨)が重要なキーワードになってストーリーが展開するのですが、最後まで読んでもなぜ「品字様」?だったのかすっきりしない。「轟」でなくて「車」でもよかったんじゃない?と思ってしまう。

また、永久囚人では「77セグメント」がキーワードとなって展開していきますが、結局「文書捜査官」でなくて素人でもわかりそうな程度の謎しか隠れていませんでした。

というわけで、ここまではやや期待はずれな「文書捜査官」ですが、次作ではさすがプロ!とうならせてくれる謎を文章から探し出してくれることを期待しています。

基本的には好きなキャラなんですよ~!

 

山彦 ヤマダマコト kindle

目の病気で視力が落ちたためkindle愛用者になって1か月がたちました。

文字の大きさがコントロールできるで助かっています。

最初は縦長画面で5行表示でしか読めなかったのが、少し回復して8行表示まで読めるようになりました。これでも、随分大きい字です。逆に不便なことは、書店でカバーや中身を眺めてから買えないところ。私の好みのジャンルはだいたい決まっているのですが、まだうまく検索できません。しかし、これまでは購入した文庫本は溜まると売却していたのですが、kindleは全部保存しておけそうなので、これまでたまにやらかした、「同じ本を2冊買ってしまう」ミスが減りそうです。まだまだ、kindleになるのが遅い本とか、kindle化されない作家さんもいるみたいで(出版社による?)、視力が回復してもkindleを使い続けるかどうか、迷いそうです。

ところで、「山彦」ヤマダマコト です。

日本を舞台にした伝奇ファンタジーをあまり目にしたことがなかったので、面白く読めました。舞台も自分の故郷に近い日本海側、しかも最近ちょっとハマっている山歩きの雰囲気が充満していて、世界観は親しみやすいものでした。自分の故郷の山にも、(まさかフライングマンはいないにしても)サンカがいてもおかしくありません。なんとなく彼らの生活に憧れている自分に気が付きました。

ストーリーは11年前の事件と現在が平行して書かれているのですが、最初はそのことに気が付かず、両方とも現在進行形と思って読んで、???でした。 途中からなるほど、11年前の若い市議会議員の娘がこの子で、市議会議員に近づいた若いイケメンサンカが彼で、と納得できそこからはより面白く読めた気がします。

主主人公「フミ」が魅力的ですね。素朴で、純粋で、理解を超える力を持っていて、一度でもお知り合いになりたい序女性です。最終盤でフミが須見が顔を近づけると、キス?と早合点して照れるシーンはいいですね。

11年前の出来事のすべてが、現在進行形の事件の伏線になっているのは、少しできすぎ?と思ってしまうのは、欲張りでしょうか? 須見の父の死因まで、きれいに解き明かされてしまうt、ちょっと満腹感が出てしまいました。

他の作品も読んでみたくなる作家に出会えたと思っています。

たゆたえども沈まず 原田マハ 幻冬舎 kindle

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少し目の調子が悪いので、文庫本が読みずらくkindleに手を購入しました。kindle端末ではなくfire HD端末を初体験したのですが、文字の大きさを変えることができるのでいいですね。ただ思ったより重く(カバー込で500g)片手で長時間持つにはちょっと重いです。

さて、この作品ですが、ゴッホと関わりがあった2人の日本人を描いています。(メインの登場人物は、ゴッホ、ゴッホの弟テオ、林忠正、加納重吉」と4人ですが、日本人2人を通してゴッホの生涯を描いているので、2人がメインということにします。史実に基づいたフィクションということですが、原田さんが描くアートの世界ですから、ゴッホの人生は史実に正確でしょう。

明治初期、日本からフランス・パリに渡り、フランス社交界で有名な日本美術専門の画商として活躍してた日本人がいたなんて想像すらしていませんでした。とんでもない日本人がいたものです。林忠正のような日本人が基調な浮世絵を海外に持ち出したから日本国内に残っている浮世絵が少ないと、まるで国賊のように言われていたこともったらしいのですが、彼らが国外に持ち出したからこそ、こんなに世界中で高く評価され保存されているのは間違いありません。明治初期の日本では日本古来の文化は見向きもされていなかったでしょうから、彼らが日本から持ち出したからこそ、浮世絵の芸術性が認められ、尊重さえた、いわば浮世絵を絶滅から救った恩人とも言えるでしょう。

タイトル「たゆたえども沈まず」は パリを表す言葉だそうです。支配者が変わり、幾度となく外敵に攻撃されてもパリはパリであり続けます。おしゃれで時代の文化の最先端を進み続けるパリは不滅ということなんでしょう。そして、ゴッホの優れた芸術性も不滅という作者の気持ちが籠められているタイトルです。そしてパリとはちょとと違いますが、日本から海外に出かけ、苦労をしながらもなんとか成功を治めた日本人たちもまた「たゆたえども沈ま」なかった、忘れてはならない人たちなのです。

林忠正・・ものすごい日本人がいたものです。

 

 

COPY 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 内藤了 角川ホラー文庫

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待ちに待った比奈子シリーズ10作目!最初は新米刑事で頼りなかった藤堂比奈子さんがいまや中堅!でも七味唐辛子の缶が手放せないのは相変わらず。

当初は1作品毎に単発の事件が起きていたのですが、ここ数作品は、世界的な悪の組織「スヴェート」の対決が表に出てきています。保さんがいる日本精神・神経医療研究センターも、シリーズ初期は近未来的な研究施設という印象だったのですが、ここにも「スヴェート」の入り込んで対決の舞台となりそうな雰囲気。このセンターにいる保さん、永久くん、金子くん、にも影人間が迫ってくる雰囲気、そしてこれまで友人扱いだったスサナも味方かどうか怪しくなってきた。と 何やらシリーズ全体の方向性を大きく変えようとしているやに読めてしまうのですが、当シリーズ当初からのファンとしては少し寂しい気がします。やはり刑事ものミステリーは、事件解決までのプロセスが魅力なので、謎解きがあっさりしているとミステリーとしての魅力が薄れるような・・・。

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そして、もう1つ、この作品で驚いたこと! 比奈子と保の関係です。シリーズの前作品で書かれていたのを見逃したかもしれませんが、比奈子と保はプラトニックな関係だとばかり思っていたのですが、そうではなかった! 衝撃でした。ファンとしてはなんか比奈子に裏切られたような・・笑

1作目の「ON」を読み返そうにももう手元にないので・・困ってしまいました。

このシリーズはどこへ向かっているのでしょうか? 初期からのファンとしては内藤さんを信じてついていくだけです。

 

夏の雷音 堂場瞬一 小学館文庫

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珍しく警察が主人公ではない堂場ミステリーです。舞台は神田駿河台。裏道の情景や、古い喫茶店、街の食堂(おそらく学生向けの)など街の様子が丁寧に描かれていてプ~トロも懐かしくなりました。学生時代をこの街で過ごした人にとっては、必読の一冊ではないでしょうか? 

堂場さんこの街の大学の卒業生では?と思いカバーの著者略歴を見るとそうではありません。ひょっとしたら予備校に通っていたのかな…と関係ない妄想。(当時は、あの街で一番偉そうに歩いているのはS予備校生だ!と言われていましたから 笑)

ストーリーは、いわくつきのギターの名器をめぐる殺人事件を、大学教授が解き明かしていくというもの。謎を解いていく過程は、良くも悪くも堂場ミステリーでグイグイ引き込まれていきます。

堂場さんの作品では、調査(捜査?)が進むにつれて登場してくる人物が犯人であることが多く、登場人物同志の意外な関係性が暴かれて事件解決になるパターンが多い、と思うのですがいかがでしょうか?このパターンを頭に入れて読むと、犯人捜しが楽だったりするかもしれませんが、意識しすぎると読書がつまらなくなりますね。

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この作品では、もう一つの堂場ワールドが全開です。もう一つの堂場ワールドとは、モノに対する蘊蓄。この作品の主人公はギターと言ってもいいくらいあるギターが謎解きの主役になっています。「オトコの一理」ではギターのことにはまったく触れられてなかったのに、この作品ではロックとギターに関する蘊蓄が満載です。

逢沢杏子ちゃんも光ってました。

そして、この作品で一番光っていたのは、逢沢杏子ちゃん。主人公の吾妻幹准教授の生徒なんですが、事件解決に一枚からんでいるわけでもないのに、やたらと存在感があって魅力的でした。(単なるプ~トロの趣味かもしれません 笑)もしかしてもう少し活躍させる予定で登場させたのが、活躍する場面が作れなくなったのかも?と想像するのもまたこの作品の楽しみですね。

ギターコレクターの世界にどっぷり浸からせてくれる一冊!神田駿河台で青春を送った人には是非読んで欲しい!

最後に、タイトル「夏の雷音」です。雷音=ライオン なので、ライオンのようなタテガミがふさふさした人物、ライオンのように狂暴な人物が主役?がどこかで登場してくるのかと思って読んでいたら、ちょっと肩透かしを食いました。 まあ正解は読んでのお楽しみということで。

 

奇跡の人 原田マハ 双葉文庫

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あの有名な「奇跡の人」ヘレン・ケラーさんの実話をベースにした、ヘレン・ケラー青森版です。話の大筋はヘレン・ケラー物語とほぼ同じ。最後に「水」「water!」と叫ぶところも同じです。登場人物の名前もサリバン先生は去場安(さりばあん」とヘレン・ケラーが介良れん(けら(へ)れん)となっています。どなたも小さい頃に読んだことがあるでしょうから、なんだ、知っているお話、と思ってはいけません。

原田さんの物語には、もう一人「狼野キワ」という青森の旅芸人が登場します。生まれつき視力がなく、津軽地方の旅芸人の師匠に預けられ、家々を回って三味線と歌を披露し食料やお金をもらって歩くボサマという人たちだそうです。あの津軽三味線の荒々しくて物悲しい音色は、こういう人たちが伝承してきて生まれたのかもしれません。このキワとれんの友情が、この物語のもう一つのストーリーとなっています。この物語では、れんとキワの短かった同居生活から約70年後に、キワを重要無形文化材に指定しようとするエピソードから始まります。

れんと安の物語も実話をベースにしているのなら、キワも実在の人物がモデルなのでは?と思い調べてみましたが、青森の旅芸人が指定された事実はみつかりませんでした。新潟・長岡で「最後の瞽女」と言われた小林ハルさんという方が指定されていました。原田さんは、この人を取り上げたかったのではないでしょうか? この「奇跡の人」では、れんとキワの友情がれんに奇跡を起こし、2人の関係性がこの物語を最後までひっぱってくれています。2人の友情は、原田さんの作品に、ヘレン・ケラー物語には無い魅力を与えてくれました。